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岐阜地方裁判所 昭和38年(ワ)553号 決定 1969年9月24日

申立人 吉野建材株式会社

破産管財人 林千衛

主文

本件受継の申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

一、本件受継申立の要旨は、原告申立人・被告太陽木材工業株式会社間の昭和三八年(ワ)第五五三号否認の訴につき、被告太陽木材工業株式会社は昭和四〇年三月一七日名古屋地方裁判所において破産宣告を受け、訴訟手続が中断したが、同被告会社の破産管財人には、弁護士宮崎厳雄が選任されているので、本件訴訟手続を受継せしめられたい。」というにある。

二、よって判断するに、申立人(原告)の被告太陽木材工業株式会社に対する訴は、原告が吉野建材株式会社の被告に対する買掛金債務金一、五四〇、八二七円の弁済を否認し右金員の返還を求めるというにあるところ、破産法上否認権を行使しその逸出した財産の返還を求める請求権は、本件の如き金銭の返還を求める場合においては金銭の特殊性から相手方の一般財産中に混入してしまっているとみるべきであるから、相手方が破産した場合にはその破産財団が引当となるところの請求権、すなわち破産法上の破産債権に該当するものというべきである。ところで破産法上、破産債権に関する訴訟が破産宣告当時継続している場合は、その債権が破産債権として届出られ債権調査期日に異議がのべられたとき、破産法第二四〇条第二項、第二四六条第一項により異議者を相手方として債権者から受継の申立をすることによって訴訟を受け継がせるのであり、破産債権として届出ることなく直ちに破産管財人に訴訟を受け継がせることは許されない。

しかるところ、受継申立書添付の証明書その他本件記録によれば太陽木材工業株式会社は昭和四〇年三月一七日名古屋地方裁判所において破産宣告を受けたが、申立人は未だ破産債権として届出すらなしていないことが十分うかがわれるので太陽木材工業株式会社破産管財人に対する本件受継の申立は、同管財人において受継の適格を欠くものであって理由がないものというべきである。

よって、本件受継の申立は、理由がないから民事訴訟法第二一八条第一項によりこれを却下し、申立費用は申立人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 丸山武夫 裁判官 川端浩 園田秀樹)

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